PRESS RELEASE
1997年12月1日 

 報道関係者各位

日本インターネット協会
 事務局長 高橋 徹 


 
中学・高校生を対象とした世界的な教育プログラム
ThinkQuest(シンククエスト)に対する日本からの参加を促進・支援

日本インターネット協会が米国ANSと
日本側ナショナルパートナーの合意書にサイン



 日本インターネット協会(会長、石田晴久)は、中学・高校生(12才〜19才)を対象とした世界的な教育プログラム ThinkQuest(シンククエスト)に対する日本からの参加を促進・支援することを目的に、この度、同プログラムの主催団体である米国アドバンスト・ネットワーク・アンド・サービシズ(Advanced Network & Services, Inc.)との間で日本側ナショナルパートナーの合意書にサインをいたしました。

 ThinkQuestは、世界中の中学・高校生に対してWebページ制作のコンテストを通じて、自らの興味のある分野について深く考え探究する機会を提供すると同時に、その成果をインターネット上の教育ツールとして世界中で共有できるようにしようとする非常に画期的な教育プログラムです。

 このプログラムでは、2〜3名の生徒がコーチ(先生)と共に一つのチームを組み、特定のテーマのもと、世界中の生徒の教育に役立つWebページの制作を行ない、その成果を競い合います。提出された作品はインターネット上のライブラリーとして世界中からアクセス可能なものとなります。応募できる部門は、「科学・数学」、「芸術・文学」、「社会科学」、「スポーツ・保健」、「学際(複数の学問分野にまたがるもの)」の5部門です。制作期間は半年から一年に渡り、最終的な審査においては、その作品の教育的な価値のみならず、作品が出来る上がるまでの協力状況、出来上がった作品が世界の人々からどれだけ広くアクセスされているか、などが評価されます。

 審査の結果、各部門毎に第1位〜第5位までが決定されるとともに、部門を越えて最も優秀な作品には最優秀賞が与えられます。各賞を受賞したチームの生徒一人一人に対して奨学金が与えられるのもこのプログラムの大きな特徴となっています。最優秀賞にはUS$25,000(約300万円)、各部門の第1位から第5位にはUS$3,000〜US$15,000(約35万円〜約180万円)が授与されます。また、チームを指導したコーチ(先生)および学校に対しても賞金が与えられます。

 ThinkQuestの目的は、まさに「考えることへの探究」であり、その結果を未来の資産として一つ一つ積み重ねていくプロセスであると言えます。ThinkQuestは、単なるWebコンテストの枠を越えて、インターネットを活用した新しい教育と学習のスタイルを確立しつつあると言っても過言ではありません。

 一方、日本の教育現場におけるインターネット利用を見ると、1995年4月に始まった通産省・文部省による「100校プロジェクト」、1996年10月に始まったNTTの「こねっとプラン」などを契機に全国の学校がインターネット利用を本格的に始めつつあります。また、去る11月4日には、町村信孝文部大臣が「2003年度には全国すべての小中高校と養護学校をインターネットで接続する」という方針を明かにしました。

 私共、日本インターネット協会は、このような教育現場のインフラ整備という流れの中にあって、今後益々その有効な活用方法について模索検討していく必要があると考えております。特に、インターネットのグローバルな接続性やマルチメディアによる自己表現を可能とするWorld-Wide Web(WWW)などを活用したオンライン教育プログラムの促進・普及が非常に重要であると認識しております。インフラ整備がインターネットのハードウェアだとすれば、オンライン教育プログラムはまさにインターネットのソフトウェアと言えるでしょう。今回、当協会がナショナルパートナーとなった ThinkQuestプログラムは、情報社会において必要とされる人材を育成するという意味においても、現在の日本にとって必要なプログラムであり、それを促進することは、インターネット業界を代表する当協会の役割だと考えております。

 将来的には「日本版ThinkQuest」の開催をも視野に入れつつ、今年度は ThinkQuest '98 に対する日本からの参加を促進・支援する活動を進めていきたいと考えております。ThinkQuest '98 は、本年9月から来年2月末まで申込書の受付を行ない、申込書が受理されたチームから順次Webページの制作に入っていくことになっています。作品提出の締切は来年の8月末です。今後、日本においては、2月末の申込締切に向けて、できるだけ多くの中学校、高等学校に参加を呼びかけていきたいと考えております。その一環として、12月21日(日)には、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて「ThinkQuest '98 ワークショップ」を開催し、参加を検討している先生、生徒に対して、ThinkQuestの意義やルール、これまでの作品例などについて説明をする予定です。今後の ThinkQuestの日本における活動につきましては、http://www.kids-commons.net/thinkquest/をご覧下さい。


 お問合せ先:

    ThinkQuest Japan 事務局

     〒169 東京都新宿区大久保2-4-15 サンライズ新宿ビル
         TEL: 03-3204-8104 FAX: 03-3202-2414
         E-Mail: tq-sec@global-commons.co.jp
         Webサイト: http://www.kids-commons.net/thinkquest/


●ThinkQuest '96 での主な受賞作品について

 ThinkQuest は、今年で3年目(ThinkQuest '98)を迎えます。ThinkQuest '97 は、現在最終審査を行なっている最中のため、ここでは ThinkQuest '96 での主な受賞作品をご紹介します。

 科学・数学部門では「ザ・フラクトリー(フラクタルの工場)」が第1位を獲得しました。フラクタル理論に関する数学的知識を全く持っていない人に対して、フラクタル理論を教えるという教育ツールです。

 芸術・文学部門では、音楽教育のオンラインガイド「ミュージック・ネット」が第1位を獲得しました。この作品は、どのようにして音楽教育がアメリカ社会の中に取り込まれていったかということ、そして、音楽が私達とどのような関わりを持つのかということに焦点を当てています。

 社会科学部門では、アメリカの司法制度案内「殺人犯の分析」が第1位を獲得しました。実在する資料に基づいた殺人事件のフィクションを作り、それを読んでもらうだけで結果的に学習ができるという工夫がなされています。

 スポーツ・保健部門では、「走ること」に関してあらゆる面から探った「ランナーズ・オアシス」が第1位を獲得しました。

 学際部門では、「POV-Ray」というリアル3-D画像作成ソフトを学習するための「オンライン・POV-Ray・チュートリアル」が第1位を獲得しました。

 最優秀賞には、株式市場の仕組みをシミュレーションを通じて学ぶ「エデュストック」という作品が選ばれました。シミュレーションにログインすると、最初に10万ドルが与えられ、実際の株式市場から20分遅れのデータを用いて様々な銘柄の株式を疑似的に売り買いすることができるようになっています。


●Advanced Network & Services, Inc.について

 ThinkQuestを企画・運営する Advanced Network & Services, Inc.(以下、「ANS」)は、コンピュータネットワークのアプリケーションとテクノロジーの利用促進によって教育を向上させていくことを目的に1990年9月に設立された非営利組織です。

 ANSは、IBM、MCI、Merit、Northern Telecomとの協力により全米で最大かつ最高速度のネットワークを構築し、1990年から1995年にかけて NSFnetバックボーンサービスを提供していました。

 1995年2月、ANSは、そのネットワーク資産のすべてをアメリカオンラインに売却し、その売却益をもとに教育および科学を支援する幾つかの新しいプログラムを開始しました。ThinkQuestは、その内の一つです。

 Webサイト: http://www.advanced.org/


●日本インターネット協会について

 日本インターネット協会は、インターネット関連企業を中心として、日本におけるインターネットの普及・啓蒙、インターネット技術の研究開発の促進、ネットワーク関係団体の相互交流などを目的に1993年12月に設立された団体です。具体的な活動は、10の研究部会に分かれて進められています。

 研究部会の一つである「教育へのインターネットの利用検討部会(通称:教育部会)」では、これまで1994年、1995年、1996年と続けて「小中高校の先生のためのインターネット研修会」を開催し、教育現場におけるインターネット利用の普及を推進してきております。

 Webサイト: http://www.iaj.or.jp/