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表題:読売IT Special
10年先の子どもたちに求められているものとは?
なぜ「総合的な学習の時間」が必要なのか。
── H14年度からいよいよ新学習指導要領がスタートし、小中学校においては、「総合的な学習の時間」が実施されますが、この新しい時間が設置された、意図は何なのでしょうか。

■永野

10年先の世の中に、どんな力を持った子どもたちが望まれているか、ということを考えたときに、いくつかの観点が出てきました。

まず一つ目にはグローバルな視野です。現在のネットワークの普及を見てもわかるように、一つの国というレベルにとどまらず、地球規模で考えるグローバル化が、日本社会にも求められています。世界という視野に立って、様々な事柄が進んでいきます。

二つ目は、協力と協調です。これからの仕事は、個人が単独で行うよりも、複数の人たちと協力したり、判断することがほとんどになります。ネットワーク時代になると、離れたところにいる人たちが、相手の立場(文化や背景)を考え、尊重しながら、協同で仕事ができるシステムが必要になります。三つ目には、メディアの活用が求められます。

こうした世界で生きていく力をつける内容は、従来の教科の中で考えてみると、位置づかない内容ばかりなんですね。広い意味では、国語や算数の中にもこのような要素は含まれていますが、やはり国語には国語の、算数には算数の教えることがあるので、なかなか教科には取り込むことができませんでした。

例えば、ものの値段を考えるとき、換算の問題は「算数」の内容であるし、ものの産地について調べるのは「社会」の内容であるし、一つの題材をみたときに、一つの題材の中に従来の教科で求められたものを統合して、問題解決的にアプローチすることによって、従来持っていた力が位置づけられていくという方法が必要になってきたわけです。

そこでまず、「総合的な学習の時間」という時間を週2から3時間作ったわけです。これは全体の1割以上を占めます。これだけの時間を使って、今までとは違うタイプの学力を身につけるためのトライアルをしましょうという考え方でこの時間を作ったんですね。

これまで、教科における学習内容は、文部科学省が決め、教科書に反映させていたわけですが、「総合的な学習の時間」については、課題の中にその意図がうまっていたり、時代とともに変化したり、そういった余裕のある中で進めていきたいという意向があったため、教科書を作らないということをまず決めたわけです。つまり、いい意味で、カリキュラムを教育委員会や学校に解放し、独自のカリキュラム開発も含めた形で時間を設けたわけです。これは、全く画期的なデザインと言えます。

さて、問題はこの時間で「何をするか」です。様々なことがあげられますが、結局「21世紀を生き抜く子どもたちの力」を考えているわけです。「国際化に対応できる」「地域協力ができる」「問題解決ができる」「コミュニケーション能力がある」「情報活用ができる」、、、、これらに基づいて、小中高等学校で、それぞれこの時間をどう使って模索していくかというのがスタートの段階です。いっぺんにシフトするのは難しいでしょう。

模索していく中で、まず人がものを学習するのに一番大事なのは、目的を持っているかどうかということなんです。自分自身で目的を持って考えるということ。自我関与があるということが大事です。つまりある事柄に自分と関わりがあるということ。自分と関わりがあることとないことは、本人にとっての習得する能力が全く違います。例えば英語の勉強を「やりなさい」と言われてやる子どもと、自分がやらなければならないからやる子では、同じ先生のアドバイスでもその習得能力が全然違うわけです。

また、失敗を経験することも重要です。自分の興味に基づいて問題を解決していくことと、失敗を計算の中に入れていく学習プロセスの中にいれていくということが大事と言われているのですが、これまでの学校教育の中では教えるべきことが多すぎて、それができませんでした。最初から教え込んでしまうという方法をとってきたわけです。そうではなくて、これまでの教科とクロスできるようないいテーマや課題学習をすることを、この時間では期待されています。

■小林

実際に授業をしていて感じることは、授業はもう聞くものというスタイルになってしまっているんですね。先生が何を指示するのかというのを待つ姿勢になってしまう。学年が上になればなるほど、反応の無い子が増えてくる。子どもが自主的に、自分で考えるとか解決するという力がなくなってきているわけです。またそういう力を養う時間もこれまではなかったわけです。こうした状況において、「総合的な学習の時間」が週2時間設けられたことは画期的で本当にすごいことだと思います。

後は学校がどういう方針でやるか、また先生がどんな授業を組み立てるか次第だと思います。先生の力はとても大事で、指導書に従って授業を行うといった時代ではありません。先生自身が研究して、子どもたちをしっかり見て、今どんな力が足りないのか、どんな力が必要なのかを先生自身が考えてやっていかねばならないと思います。逆に何でもできる訳です。

■永野

やる気のある先生にとっては良い時間なんだけれども、不安になっている先生も多いんですよね。今までこうやりなさいと言われてきて、その通りでよかった時代から、先生自身も創意工夫してやりなさいと言われても不安なのは事実ですね。今までも創意工夫していた先生にとってはうってつけの時間だと思うけれども、そうでない先生にとってはむしろ「与えられてきた」子どもと同じようにつらいかもしれません。

解決の一つは、子どもたちがやるべき課題をどう設定するかにあります。つまり、子どもにどんなことをやらせたらいいのかということを常に考えるということなんです。さきほども申し上げたように、「総合的な学習の時間」ができたことと週休2日制になったことで、教科の時間が減りました。

トータルで週4時間減っています。従来型の評価をしたら、与えた時間に比例して3割減になっているわけです。ですから従来型の教科は70点しかとれないかもしれませんね。しかし大事なのは「新しい学力」が求められているということなんです。残りの30点を補う全く違った学力が必要ということなんです。「総合的な学習の時間」で、この部分の学力が確実にあがります。従来の学力と今のものがかねあうと、先ほどの30%が補完されるだけでなく、むしろ強化されていくわけです。

こうしてみると、この「新しい学力」がつくカリキュラム(課題)を先生は設定しなければなりません。この大事な部分を、子どもの興味に基づいてやっていくわけですが、好きなことをするだけではいけません。小中高等学校それぞれに、求められている課題というのがあると思います。それをやると、「新しい学力」のみならず、従来の教科、理科も社会も英語も、力がついていく、そういう課題を選んでいくことがものすごく大事になってきます。


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